<5P   一覧   次>

 

 

ー東京都奥多摩町山のふるさと村 『紅葉のある山の朝』 H14,11,5ー

早朝の湖畔、凛とした静寂に包まれている
色づき始めたばかりの山が、向こう側に見える
私と山の間にあるこの空気を、表すことは出来るのだろうか?



 5日 晴れ 弱風 パン。お好み。ご飯、味噌、チキンの香草焼き、野菜炒め、卵焼き。

 今日が旅の最終日だ。朝かなりのプレッシャーを感じながら6時に1キロ下の湖畔へ行く。
湖面に映った紅葉を描こうと思っていたが、気温が低すぎて湖面上には水蒸気が漂っていた。そして遠くの一番高い山には日が当たって良い色をしていたのでそれらをまとめて和紙に描こうと思ったら凍り付いて色が混ざらない。
急いでスケッチブックに取り替える。

そして一枚描くがいまいち気に入らなくてすぐに2枚目を描いた。そしてこれは最後にふさわしいものが出来た。
あまりにうまく行ったので思わずこれを描くチャンスをくれた自然に礼を言った。
しかし、そのあとテント場に戻る途中で絵の具の3分の2以上が流れて下に溜っていた。
気がつくのが遅く、気がついたときには完全に手遅れだった。動かさずに自然乾燥させていればそのまま残ったのに。

テント場がもっと近くにあれば・・・悔やんでも悔やみきれなかった。
まさに幻の名作となってしまい、あまりにうまく描けたので、もう一泊して描く気はしなかった。
もう一回描いても今日の真似でしかないから描く気がしない。
形としては残らなかったけど描いたのは確かで、それだけである程度満足できるものだった。
以前ならそれでよしとしたが、今回は個展のための絵を残すという目的があるために悔やみが大きくなった。

テントに戻ったのは8時半前で、それからもなかなか絵が乾かず、出発できたのは9時45分だった。
今日はほとんど下りだったので楽だった。奥多摩湖に向かうときに昼を食べたところで昼をとり、さらに玉川を下っていった。
昼を食べた所で絵を描こうと思っていた。実際たくさんの人があちこちで絵を描いていたが、変なおっさんと喧嘩をして絵を描く気分になれなかったので止めた。
着いたのは大きな運動公園で今は名前はわからない。玉川沿いで、山に沈む夕日をビールを飲みながら眺めた。
ふとやっと終わったんだという実感が沸いてきた。長かったなーと思う一方、あっという間だったような気もする。

最初の頃はどうなるのか予測もつかなかったし、去年はもちろん今年の夏前でさえ、終わる日なんてまだまだ先のような気がして想像もつかなかった。
実にいろんなことがあり、あり過ぎたが、大変なのはこれからだ。これからやらなければならないことが山ほどあるし、それらは必ずしもやりたいことではないからだ。
終わったことで一息つくのは良いが、あまりのんびりはしてられない。
とにかく明日やまちゃんの家に着けばこの荷物を積んだ状態で自転車に乗ることはないだろう。
そういえば、昨夜とうとうテントのインナーのチャックが再起不能になってしまった。
テントも自転車も体も全てが限界近く、ぼろぼろだ。まだあと少し走らなければならないので完全に終わりではない。明日の朝はまだ絵も描くし・・・。いい絵が描けるといいが・・・。